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■ニュースコメント[ 2003年07月分 ]

経済ニュースコメントのバックナンバーを保存したいと思います。とくに地域経済のコメントを重点的にしていきます。
ニュースソースは主にNIKKEI地域経済から引用しています。
リンク切れの場合を考慮して全文引用しています。

■地方ブランドのつくり方[ 2003年07月31日 ]
■異業種コラボの成否[ 2003年07月29日 ]
■文明堂はいくつあるの?[ 2003年07月24日 ]
■コラボレーションとコンペティション[ 2003年07月17日 ]
■プロダクトのコンセプト化[ 2003年07月10日 ]
■ブランド構築のインテグリティ[ 2003年07月03日 ]


↓↓ ここからニュースコメントコーナー ↓↓
■地方ブランドのつくり方[ 2003年07月31日 ]

伝統は革新の母体であり、革新は伝統の端緒である。
地方のブランドはいかにしてつくられるのか、またどうつくるべきなのか。

(引用開始)
高級化粧筆メーカーの白鳳堂、米国に直営販売店を出店へ
【中国】2003/06/28 NIKKEI地域経済より
高級化粧筆メーカーの白鳳堂(広島県熊野町、高本和男社長)は7月末をメドに、米国で自社ブランド製品の直営販売店を出店する。国内に続き米国でも自社製品を店頭販売することにより国内外で製品知名度を向上させる。高級化粧品ブランドへのOEM(相手先ブランドによる生産)供給事業より収益性の高い自社製品を拡販し、経営基盤の強化につなげる。
同社はロサンゼルス市内に自社製品の専門販売店「HAKUHODO」をオープンする。店舗面積は約40平方メートルで、改装費などの出店投資額は700万円程度となる見通し。自社製品は「白鳳堂」と「ミサコ」の2ブランドで、チーク用、仕上げパウダー用、アイライナー用、リップ用など計60種類ほどの化粧筆を店頭に取りそろえる。

高級化粧筆の白鳳堂、東京・青山に国内初の直営販売店
【中国】2003/07/17 NIKKEI地域経済より
高級化粧筆メーカーの白鳳堂(広島県熊野町、高本和男社長)は今秋をメドに、国内初の自社ブランド製品の直営販売店を東京に出店する。百貨店の特設コーナーでの展示販売に加え、常設店舗を構えることで製品知名度を高める。高級化粧品ブランドへのOEM(相手先ブランドによる生産)供給事業より収益性の高い自社製品を拡販し、経営基盤を強化する。
同社は東京・青山周辺に自社製品の専門販売店「白鳳堂」(仮称)をオープンする。店舗面積は150平方メートル程度で、改装費などの出店投資額は3000万円程度の見通し。自社製品は「白鳳堂」「ミサコ」の2ブランドで、チーク用、アイライナー用、リップ用など計400種類ほどの化粧筆を店頭に取りそろえる。
店内には販売員に加え、メーキャップアーティストも常駐。来店客に化粧筆の使用法を紹介するほか、随時開催するイベントでは流行のメーク方法などを披露する。販売や情報発信の拠点にするとともに、化粧品メーカーや百貨店の担当者らとの商談場所としても活用する。
(引用終了)

地方は一般に保守的といわれる。保守という言葉の響きが持つイメージというと、頑迷であるとか非進歩的な停滞であるとか否定的なニュアンスが引き出されるし、イメージされる地方の風景もそれに準じている。政治の世界では保守の対義語として革新が使われるが、ここにおいても保守とは伝統主義でむしろ反動的ですらあるように思われている。

しかし、正しく“保守主義”を定義するなら単純に伝統を墨守するのではなしに、これは良い伝統だから存続する、これは悪い伝統だから廃止するという目的合理的に選別できる一貫性を指す。もちろん伝統を存続する・廃止するという態度で臨むなら、伝統を培った歴史を知らなければ事が進まない。そして、今の日本人に自国の歴史を正しく学ぼうという動機付けがあるかというと、それはない。だから保守と革新という位置付けもありえないし、保守的も保守主義もない。ただはびこっているのは伝統主義ということになる。

ところが豈図らんや、地方のブランディングの成功例を見ていくと、地方の風土(気候・地質から産出されるものまで含む)や歴史的地縁(人々の考え方・文物から派生する行いまで含む)に基づく伝統の上に個人的・企業的革新をおこなってブレークスルーをもたらすケースが多い。地方の伝統を知り、目的合理的に判断しているからこそできるのであって、これこそ伝統主義ではなく保守主義の発露なのである。

その土地の風土とその土地の歴史を知悉することでおのずと進むべき方向性(進みたい分野と風土・歴史から導きだされる性質と時代的要請の合致点にそれはある)は見えてくる。するとどうやら地方の風土・歴史といった伝統に個人的・企業的革新を結び付けることが、おおまかに云って“地方ブランドのつくり方”とわかってくる。

広島県熊野町にある高級化粧筆メーカー「白鳳堂」は、もともと熊野町の伝統的な特産品である書道用の筆を生産していたが、需要の変化に伴い、高級化粧筆を海外の高級化粧品ブランドにOEM供給するという企業的革新で“地方ブランドのつくり方”を実践しつつある好例といえるだろう。

参考URL
特産品の書道筆から高級化粧筆メーカーになった:白鳳堂


■異業種コラボの成否[ 2003年07月29日 ]

洋食器で有名な燕市のメーカーがソニープラザと手を組んでブランドを立ち上げた。このような異業種のコラボレーションで留意すべき点はなんであろうか。

(引用開始)
明道、ソニープラザと共同で食器ブランドを開発
【甲信越】2003/05/01 NIKKEI地域経済より
洋食器販売の明道(新潟県燕市、明道章一社長)は、独自の洋食器ブランド「ENN(エン)」を開発した。ソニー関連会社のソニープラザなどとの共同企画の一環で、明道が工業デザイナーと組んで設計・開発した。同社は付加価値の高い洋食器として、海外や国内の百貨店などを中心に売り込んでいく考えだ。
まずスプーン、フォーク、ナイフの握り部分にアセチレンを採用した「オーバル」「レクト」の2シリーズを発売した。調理鍋のシリーズも近く加える予定だ。
商品設計には東京都内の工業デザイン事務所CPC(東京・渋谷)が参加した。生産は洋食器メーカーのサクライ(新潟県燕市、桜井薫社長)に委託する。
ブランド名「ENN」は、燕の音読みと通貨の円を引っ掛けたもの。「海外展開を視野に入れて外国人にも理解しやすい名前にした」(明道社長)という。同社は「ENN」を安価な中国産の洋食器と競合しない高級食器ブランドと位置づける。
(引用終了)
コラボもコンペもその意義は新しい商品・サービスを生み出すことにある、というのは前回取り上げた。コラボレーション(以下コラボ)は、合体または組み合わせによるブレークスルーであり、コンペティション(以下コンペ)は、分裂または特化によるブレークスルーである。ブレークスルーによってもたらされるであろう商品・サービスを市場は常に求めている。消費者はより良い使い勝手や心地良さを待っているわけだ。

こうして毎日リリースされていく商品・サービスには、デザインやプロダクトを統合するコンセプトがある(はずである)。コンセプトはそれ自体でひとつの要素だが、同時に全体を表している。同様にデザインもまた部分を装飾すると同時に、全体としての計画を貫いている。その意味で本来コンセプトとデザインは同義に近いのだが、ここではデザインはより狭い意匠の意味合いに限定して使っていることをお断りする。

またコンセプトは概念の意味合いで使っている。とくに商品・サービスにとってのコンセプトは、だれかが使用するに足る必然性を持つ機能を抽象化して、だれかに論理的に説明する役割を負う。形式論理学の言を借りれば、内包(意味内容)がなければ外延(事物の集合)はその構成を全うされない。ここがしっかりしていないとすべては砂上の楼閣と云うわけだ。

そういったわけで、概念化とその認識がリリース前になされていないとコラボ・コンペどちらの商品・サービスにせよ、一過性の話題づくりにしかならないことが多い。とくに異業種コラボを考える場合、この概念化とその認識までのすり合わせと把握は、ないがしろにされやすく死屍累々の異業種コラボ企画の失敗につながっていく。

またこういった“リリースすることに意義がある式”の失敗は、日本的なブランディングのアプローチ方法にも起因している。欧米的なアプローチでは、形而上の価値から美的修飾までの一貫性が特徴的だが、日本的なアプローチでは、商品化のあとにコンセプトの把握と検証がおこなわれるからだ。欧米的スピード経営が求められる昨今では、商品開発以後のコスト負担に耐えられずコンセプトの把握と検証まで継続されないケースが増加している。

そうした意味では、トヨタ、松下、コクヨ、グリコ、近畿日本ツーリストといった大手企業が参画している異業種コラボの代表例『Will』は、日本的なアプローチの弊害である概念の把握と一貫性の欠如を逆手にとりつつ、本来の日本的アプローチの長所である継続的な修正を踏まえながらブランディングしている、と言える。

『Will』が、今のところ成功を収めたとはいいがたいが、ともかく存続している要因には継続することでコンセプトの修正をはかっていくという共通理解がある、と思われる。

ブランドは伝統と革新の過程に生まれる。それゆえ『Will』のアプローチは正しい。しかし、これはいかに経営にスピードが求められるとは謂えども大手企業だからこそできるゆとりの上に成り立っている。

中堅・中小企業また地方の企業は、コラボ・コンペに限らずブランディングに際しては、コンセプトの基礎となる伝統の把握とそこから派生する革新の追究に努めるべきだろう。

参考URL
洋食器ブランドENNを企画・販売する:明道
洋食器ブランドENNを生産する:サクライ
異業種合同プロジェクト:Will


■文明堂はいくつあるの?[ 2003年07月24日 ]

銘菓とカフェのコラボレーションを考えているうちに思いもよらぬ事実が明らかになり・・・。

(引用開始)
まちづくり福井、文化施設のカフェレストランを公募
【北陸】2003/05/24 NIKKEI地域経済より
福井市のまちづくり機関(TMO)、まちづくり福井(社長・奈良一機副市長)が建設している「まちなか文化施設」で、カフェレストランの経営主体を公募する。同施設はJR福井駅前にある空きビルを、まちづくり福井が改築しているもの。
公募するレストランは施設1階部分の153平方メートル。客席は80席程度を見込んでおり、賃貸料は月に46万3000円、敷金は6カ月分。契約期間は5年。営業条件は2004年4月開業、基本的に年中無休で午前10時から深夜零時までの開店を求めている。出店希望者はまちづくり福井のホームページで申請書を入手。6月9日までに申し込む。まちなか文化施設は地上六階、地下1階で来年3月の完成を予定している。
(引用終了)
コラボレーションとコンペティションの違いをブランドの伝統と革新という観点から見れば、コラボレーションは互いの伝統を持ち寄って革新すること、コンペティションは互いの革新を競わせることで伝統をつくり出すこと、となる。すなわち、コラボは伝統と信頼寄りのブランディングであり、コンペは革新と機能寄りのブランディングである。

上記の記事のように、地方で新設される美術館などの公共施設にカフェを誘致する事例が増えてきた。この場合では地方の銘菓とのコラボレーションが、地方の産業促進の側面からも望まれるだろう。あらかじめ革新的なコンセプトをカフェに持ち込めなければ、互いの伝統と信頼を持ち寄るコラボレーションの手法が良いわけだ。

銘菓メーカーの経営するカフェの例としては、カステラでおなじみの文明堂が経営するカフェが銀座などに数店ある。ところが、委細を調べてみると意外なことが判明した。この文明堂カフェを運営する文明堂銀座店は、長崎にある文明堂総本店とは資本的にも経営的にも分離・独立していることがわかったのだ。そればかりではない、近畿以東にある文明堂はそれぞれ資本・経営において分離・独立しているのだ。どうやら終戦直後の混乱期に分離・独立の運びとなったらしい。

そうなるとあの「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂」でおなじみの番宣は、どこが打っていたのだろうと云う疑問も出てくる。文明堂の社名をデフォルメした商標は、日本橋文明堂を除けば各社共通であり、商品にも同じ商標名のものがあるので、共同出資で宣伝していたのかもしれない。

しかし現在では、各店とも独自のカステラや商品も製造・販売しながらしのぎを削っている。かつ営業エリアは東京を除けば棲み分けがなされているのもユニークである。

こうしてみると文明堂各社では、コラボレーションとコンペティションを絶妙に配合しながら、文明堂全体のブランドを向上させてきたことがわかる。ここではコラボレーションもコンペティションも、そのどちらもブランド向上にとって正しい方法だということを再確認できる。なぜならコラボレーション(協同)とコンペティション(競争)の行き着く先は同じくブランドの確立にあるからである。

参考URL
カフェレストランを公募する:まちづくり福井
長崎にある創業本家:文明堂総本店
新宿にある東京文明堂:文明堂新宿店
文明堂カフェを併営する:文明堂銀座店
ハニーカステラを独自商品に持つ:文明堂日本橋店
茶館ル・カフェを併営する:横浜文明堂

参照コメント
カフェについてはこちらのコメントも参照
カフェブームのあとで[ 2003年02月21日 ]


■コラボレーションとコンペティション[ 2003年07月17日 ]

前回は梅を使った共同開発を取り上げたが、今回はその共同開発を指す言葉・コラボレーションとその対義語となるコンペティションについて考える。

(引用開始)
ソフトパワー、アサツーと組み仮想商店街運営に進出
【中国】2003/06/19 NIKKEI地域経済より
システム開発のソフトパワー(広島県福山市、矢野源太社長)は広告代理店のアサツーディ・ケイと組み、仮想商店街(ショッピングモール)運営事業に進出する。顧客情報管理(CRM)手法を取り入れた低価格のサイト構築システムを開発し、全国の中小メーカー・小売店向けに販売。年内に同システムの導入店からなるポータル (玄関)サイトを立ち上げる。
モール名は「ベリストアズ」。今月末からアサツーとともに西日本で採用提案を始め、年内に全国展開する。当初の加盟店数は1000にのぼる見通しで、将来は楽天、ヤフーなど大手に匹敵するモールに育成したい考え。
同システムを使えば顧客の購買履歴を分析し、趣向に応じた商品を個別に提案するなど、従来は大手ネット通販でしかできなかった販促手法が簡単に導入できる。ソフトの期間貸しであるアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)方式のため、導入費用も月額4万5000円ですむ。
(引用終了)
ブランドにひとつの出発点を見い出すならば、それは革新的な機能の発明・付加に行き着くだろう。革新的な機能は、ブランドを構成する各要素に含まれるのを見ることができる。各要素のうち、プロダクトでは機能は使用性を帯びているし、デザインは機能の性質を感覚的に表象する。またコンセプトとは、機能の本質を抽象化しているものだ。

ブランドとは、これら機能の各要素(コンセプト・プロダクト・デザイン)による集合体が信頼となって、消費者のロイヤリティを獲得、伝統へと昇華したものである。かくて企業の努力は、有形無形のブランドを構築するために傾けられることとなる。

しかし、企業内部に機能の各要素が不足していてはブランドはつくり得ないことになる。この場合、互いの要素を持ち寄ってブランドをつくることがある。これが簡単にいえばコラボレーションである。

こうしてブランディングのためのコラボレーションは、典型としてはコンセプトの提唱とプロダクトの生産とデザインの図案が別々におこなわれ、集められることになる。ただし、まずはじめにコンセプトに対しては共通の理解が求められることは云うまでもない。はじめにコンセプトありき、が原則である。

これに対して、企業内部に機能の各要素が充足している場合、互いの機能をぶつけあって優れた集合体を選別することがある。これがコラボレーションの対義に置かれるコンペティションである。

コンペティションの典型は、規格のオープンソース化によるハードやソフトの競争に見ることができる。ここではコンセプトは共通の理解とされているのもまた云うまでもない。やはりここでもはじめにコンセプトありき、である。

ようするにコラボレーションであれ、コンペティションであれコンセプトの共通化は絶対に欠落してはならないのである。

さて、楽天やヤフーの独り勝ちを呈する仮想商店街(ショッピングモール)に新機能をもって果敢に挑むソフトパワーの「べリストアズ」は後発である以上、そのサービスが優れていることは間違いないだろう。むしろコンペティションを起こそうとする「べリストアズ」の成否は、コラボレーションとして動員される提携先アサツーの営業力の如何にかかっているように思われる。

参考URL
ベリストアズをASP展開する:ソフトパワー


■プロダクトのコンセプト化[ 2003年07月10日 ]

前回は欧米的な仮説重視のブランディングに典型的に見られる垂直的な一貫性をとりあげたが、今回は日本的な実践重視のブランディングに典型的に見られる横断的な波及性をとりあげる。

(引用開始)
河野メリクロンと野田ハニー食品、産業廃棄物の梅酢を商品化
【四国】2003/05/09 NIKKEI地域経済より
洋ランの一種、シンビジウムの種苗生産最大手の河野メリクロン(徳島県脇町、河野通郎社長)と清涼飲料メーカーの野田ハニー食品工業(徳島県鴨島町、野田正博社長)は疲労回復などに効果があるクエン酸を豊富に含む梅酢を発売した。梅酢は梅干しの生産過程で発生し、大半を産業廃棄物として処分しているが、2社は最高級の梅と塩を使い、飲用に堪える水準まで引き上げた。
河野メリクロンは昨年、事業多角化の一環として、和歌山産の梅3トンを購入し、沖縄産のミネラル分の多い塩を使って梅干しを生産、販売した。この際、発生した梅酢は塩化ナトリウム99%の旧専売塩を使う従来の梅酢に比べ、塩味がきつくなく風味がまろやかである点に着目、野田ハニーに商品化を依頼した。
野田ハニーは梅酢そのものを「究極の梅酢」として商品に仕立てたほか、梅酢にハチミツと紫蘇(しそ)エキスを合わせることで飲みやすくした「うめずバーモント」を開発した。
(引用終了)
ブランドは、例外を除けばいずれかの企業の信用に還元されるものである。その信用は信頼と機能に分解されるだろう。その信頼が(消費者の企業に対する)ロイヤリティとして伝統になり、その伝統は革新的な機能に起因する。すなわちブランドには、伝統と革新が関わってくることがわかる。では、伝統と革新どちらが大事なのだろうか。

よく経済の説明で耳にする“ニワトリかタマゴか”という比喩を思い出して欲しい。その言葉で連関すると伝統と革新は一対でありまた過程でもある、と理解できるだろう。ある伝統の出発点としての革新を認識するとき、その背後にある膨大な伝統と革新が連続する蓄積に気づくからである。そのため伝統と革新こそがブランディングの基本となる。

ブランディングは、目的合理的に伝統を取捨選択することで、革新していく作業の過程と言える。くり返しおこなわれるその過程は、仮説の構築と日々の実践と全体の検証とに分かれる。もちろんそれらは過程であるから、厳密なはじまりと終わりが設定できないものだ。ところが困ったことに人は生物的にも精神的にも終わりがないことに耐えられない。そのため任意で期限や出発点を選ぶことになる。仮説重視のブランディングと実践重視のブランディングと、ふたつに大きく傾向が分かれてくる所以である。

この選択の傾向には欧米や日本それぞれの文化的背景も見え隠れする。仮説重視のブランディングは欧米に多く見られ、別々の要素であるコンセプト(概念)からデザイン(意匠)にいたるまでが垂直的な一貫性で統合されている。実践重視のブランディングは日本に多く見られ、ひとつの要素であるプロダクト(製品)からコンセプト(概念)・デザイン(意匠)・その他へと波及していく横断的な実際性に富んでいる。

そこで、別々の要素をひとつの概念で統合するのが垂直的なブランディングとすると、ひとつの要素を別々の概念で共有・発展させるのが横断的なブランディングとは言えないだろうか。

たとえば上記の記事にあるように、梅というひとつのプロダクトをそれぞれのコンセプトに従って、梅干・梅酒・梅酢といった別々のプロダクトをつくるのが普通である(もちろん“健康”というコンセプトで共通化できないこともないが)。

梅というのはそれだけでひとつのプロダクトであるから、いずれかのコンセプトに従っているわけだ。しかし、梅という言葉を抽象的に取り出して、梅の名を冠したプロダクトまたは梅を原料としたプロダクトにして集めると、ひとつのコンセプトとしての梅が浮かび上がってくるのではないか。

ようするにひとつのプロダクトであった梅が、ひとつのコンセプトになって別々のプロダクト(梅を原料にしたもの・梅の名を冠したもの)をコンセプト内に共有・包含した形ができあがる。それはプロダクトの数だけコンセプト化されうるし、しかもそれ以外のコンセプトともクラスターのように共存している。これが垂直的に統合されたブランドと違った、横断的に包含されたブランドの波及性と実際性である。

またこのように、ブランドをつくるひとつの要素であるはずのプロダクトがコンセプト化する以上、コンセプトもプロダクト化するのもむべなるかなである。抽象的なコンセプトをプロダクトとして流通させるのに長けているのは欧米であるのは云うまでもない。

参考URL
蜂蜜から健康食品までを手がける:野田ハニー食品工業
シンビジウム独自品種「あんみつ姫」を栽培:河野メリクロン


■ブランド構築のインテグリティ[ 2003年07月03日 ]

下記のようなブランド構築(ブランディング)に際しての横断的な取り組みもあるが、そこでは概念の把握から意匠の統一までが必要になる。ここでは垂直的な取り組みに典型として見られる“概念から意匠まで”の一貫性(インテグリティ)について考える。

(引用開始)
京都市、清酒や酒杯の新ブランド開発
【近畿】2003/04/15 NIKKEI地域経済より
京都市は伝統産業品の需要を開拓するため、素材から京都産にこだわった清酒や酒杯など新ブランドの試作品7品を開発した。ブランド名は「四条京町家・祝―春の宴―」。18日から「京都市伝統産業振興館(四条京町家)」で展示販売するほか、平安陶花園(京都市)など新ブランド開発に参加した企業も販売する。
新ブランド開発には伏見地区の酒造会社である増田徳兵衛商店など5社が参加。同市は「祝い酒プロジェクト」として清酒と酒器など関連商品を季節ごとにシリーズ化する計画で、新ブランドはその第1弾となる。
(引用終了)
ブランド品を選ぶときにデザインを重要視する消費者もいるだろう。しかし、デザインがそのプロダクトの本質であろうか。提供する企業にしても購入する側にしても、デザインはひとつの要素たりえても本質ではないことは理解しているだろう。ただデザインにそのプロダクトの持つコンセプトが表されていることは大いにありうる。

ブランド品は、コンセプト(概念)とプロダクト(製品)とデザイン(意匠)といった要素で、過不足なく構成されているのが特徴である。ここでのコンセプト、プロダクト、デザインとはなにかを定義すると、コンセプトとは、使用の必然性から論理的に導き出される機能を概念化したもの。プロダクトとは、その機能を集合として使用できる状態にしたもの。デザインとは、機能の概念を具象化して視覚などの感覚美に置き換えて修飾したもの、となる。

デザインは、最終的にプロダクトの表面を修飾するものであるが、その根底にはコンセプトからのインテグリティ(一貫性)が存在している、と考えるのが仮説重視の欧米的なブランディングの帰結である。対する日本は実践重視のブランディングであり、演繹とか帰結にはそれほど頓着しない。その違いも見ていこう。

欧米的なデザインまでのアプローチは、形而上の概念→認識→倫理の統御→機能の付与(行動の付加)→美的修飾という一貫した構造で成り立っている。そもそもデザインの意味合いには計画・明示といった文言も含まれている。ようするに意匠には計画からの一貫した概念が明示されている。

一方の日本的なデザインまでのアプローチはやや紆余曲折をたどる。まず機能の付与(行動の付加)にはじまりその反復から、倫理の統御または暗黙知的な認識にいたり、美的修飾と形而上への近接がはかられることが多い。ようするに形而上の概念そのものを明示する機会があまりない。

この両者のアプローチにあらわれる違いには、宗教的・文明的な背景があることは容易に想像がつく。なにしろ欧米においては「まずはじめに言葉ありき」であり、日本においては「神は言挙げせず」であるからだ。

またこの違いは、欧米と日本の消費行動からも類推される。そのブランド品を手に入れることが自分の属する階級にそぐうのかをまず考えるであろう欧米と、まず手に入れることからはじめる日本とでは、自分も消費者のひとりである企業側のアプローチも違ってくるのも道理である。

欧米のデザインに優れたブランド品を模倣しようとするなら、まずこのブランド構築に際してのインテグリティ(一貫性)に関心を寄せるべきであろう。

参考URL
日本で最初ににごり酒を発売した:増田徳兵衛商店
京焼・清水焼の窯元:平安陶花園
京ブランドの拠点となる:四条京町家(京都市伝統産業振興館)


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